
公益資本主義とは
公益資本主義とは
公益資本主義(Public Interest Capitalism)とは、米英型の株主資本主義でも、中国型の国家資本主義でもなく、私たちの社会全体の利益つまり「公益」を追求する資本主義です。
ここで言う「公益」とは「私たちおよび私たちの子孫の経済的・精神的な豊かさ」を指します。
まず、資本主義経済においては、会社とは、労働・資本・土地など生産要素を投入し、自由に競争できる市場経済の中で利益を目的に経済活動を行い、利益の最大化を図っていくものです。
その上で、公益資本主義では、会社は「社会の公器」であると捉えています。
会社は何のために利益の最大化を図るのか?それはその会社が提供する商品やサービスなどの事業を通じて、社会に貢献するものだからです。
さらには、社会の公器である以上、会社は短命ではいけません。持続的に利益を生み出し、社員を豊かにし、社会を豊かにしていく責務があります。
したがって、公益資本主義では、会社がその原則に立ち返り、社会の公器として経済活動を行っていくことを強く提唱しています。
それは、社会を良くするような良い商品、良いサービスをつくりだすこと。
その対価として会社が稼いだ利益は、その会社を支えるすべての「社中」に対して、適正に分配すること。
それによって、会社は更なる成長を実現し、成長と分配の好循環が生まれ、経済社会が豊かになっていくからです。

「社中(Company)」とは、社員、顧客、仕入れ先、地域社会、地球、そして中長期株主といった、会社の成長を支えてくれる仲間のことを指します。
社中に対する分配の総和を大きくしていくことで、社会全体での経済的・精神的な豊かさも大きくなっていくでしょう。

世界を苦しめる格差の拡大と社会の分断
21世紀の人類社会は、非常に大きな課題に直面しています。
それは、経済的な格差の拡大と、社会の分断です。
経済的な格差の拡大とは、生まれた富が富裕層だけに還元されることで、中間層が没落し、一部の富裕層と、多くの貧困層とに社会が2分されていくことです。こうした状態ではもちろん社会は持続的なものにはなりえません。どんなにGDPが大きくて、経済的には豊かであってとしても、経済格差による不満圧力は膨張し続け、安心して暮らせない社会に陥っていきます。
さらには、多様性という名のもとで、虐げられていると感じる人たちの価値観は、2つの大きな対立する軸に誘導・集約されていき、社会がますます分断されていきます。YESかNOか、赤か青かといった二元論が跋扈し、不信と不寛容とが渦巻きます。このような社会では、失敗しない、あるいは損をしない、という近視眼的な思想が強くなり、リスクを取って挑戦しようとする人は減ってくでしょう。
ではなぜ、世界のあちこちで、同じように格差や分断の問題が深刻化していくのでしょうか?
その理由は、米英型の「株主資本主義」が世界のあちこちに浸透してしまっていることに尽きます。
株主資本主義の根本にあるのは「会社は株主のものである」という考え方です。
経営者とは、株主にとっての利益を最大化させる役割、というものです。
したがって、会社が利益を出すほど、経済が成長するほど、その分配は株主のみが享受していくため、富の偏在が進みます。アメリカのように、人口の1%の個人資産家が国民全体の35%の純資産を保有するようになっていくのです。
そして経営者の「目的」も、株主利益を高める方向へ変質していきます。 利益を作るために、給与や設備投資などの費用を削り、資産を売却し、配当を増やし、自社株買いを行なっていく。 こうした経営が「正しいガバナンス」とされているからです。


教育を受けた健康で豊かな「中間層」で溢れる社会をつくる
1970年代にアメリカに留学し、在学中に起業し、その後、全米第2位のベンチャー・キャピタリストとなった当財団代表の原 丈人は、1997年に衝撃を受けました。
それは、アメリカのビジネス・ラウンド・テーブル(日本の経団連に相当)が「会社は株主のものである」と宣言したからです。
会社が株主のものであるとしたならば、上がった利益は株主が最優先で掴み取り、社員は給与が上がらず、生産性や創造性が低下して、新しい事業が生まれず、中間層は没落し、経済格差が拡大され、社会の分断や対立が深刻化し、治安は悪化する。
そう考えた 原 丈人は、日本に帰国し、2003年に「公益資本主義」を提言しました。
教育を受けた健康で豊かな中間層をつくること。
会社は株主のものではなく、社会の公器として事業を通じて社会に貢献すること。
2008年に発生したリーマンショック以降、公益資本主義の考え方は、アメリカやヨーロッパの経営者や学者の中で浸透しはじめていきます。
そして、2019年のアメリカのビジネス・ラウンド・テーブルにおいて、会社の目的は「株主の利益の最大化」ではなく「すべてのステークホルダーに経済的利益をもたらす責任」を果たすことと宣言されました。2020年のダボス会議でも同様の内容が採択され、中国でも「株主資本主義」を見直す動きが顕在化してきています。
日本では残念ながら、 2000年から始まった株主資本主義化の流れは、2010年代に入ってコーポレート・ガバナンスコードなどで制度化が進み、2020年以降では、PBR 1倍以上の確保や自社株買いの促進などが当たり前の状態に変化してきています。
公益資本主義の実践3原則
公益資本主義は 、社員・顧客・仕入れ先・地域社会・地球という、会社の成長に貢献する仲間であるすべての「社中(Company)」に貢献することにより、企業価値を高め、その結果、中長期株主にも大きな利益をもたらしていくもの、と捉えています。
そこで、公益資本主義による経営においては、次の3点が重要な実践原則となります。
❶公正で適正な社中分配
会社が生み出した利益を株主に偏重して分配するのではなく、社員を始めとした社中に適正に分配していき、その分配の総和を大きくすること
❷中長期での持続性
目の前の利益を生み出すための短期的な視点や行動ばかりでは、持続的な成長は望めないので、中長期的な視点をしっかり持って経営にあたること
❸企業家精神の発揮
日々の改良改善に励み、良い製品やサービスを磨き上げていくこと。さら に会社の持続的な成長のため、新しい分野に果敢に取り組むこと
私たちアライアンス・フォーラム財団では、公益資本主義を実践する経営者を増やし、その裾野を広げ、制度設計の枠組みを再構築していくことにより、「教育を受けた健康で豊かな中間層の創出」を実現すべく、多くの社中と共に活動をおこなっております。
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