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バングラデシュでマイクロファイナンスを学ぶ -4-

バングラデシュの社会企業家たち

今回は私が受けた講義を紹介したいと思います。このコースではマイクロファイナンスの理論だけではなく、ソーシャルビジネスやそのようなビジネスを行う起業家たちの話を聞く機会もありました。Solaric社とBangaldesh Petrochemical Limited(BPCL)という二社の創設者から直々に講演を聞くことができました。

最初の講演はDidar Islam氏、Solaric の創設者です。まず初めにバングラデシュのエネルギー事情についての説明を聞き、日本との違いに驚かされました。バングラデシュが使用する88%もの電力は天然ガスから生産されており、そして人口の55%の人々がその電力を使っています。その一方で残りの人口の約半分は電力の届かない暮らしをしています。そのような人々はオフグリッドエリアと呼ばれる、電力が供給されていない地域に住んでいるため、冷蔵庫やコンピューターが使えません。

今回、話を聞いたDidar Islam氏はアメリカのフロリダでラジオチップの製造業に関わっていましたが、2007年に退職しました。彼はバングラデシュに住む人々の暮らしをよくするために帰国し、電子工学の経験を生かして、低コストで持続性のある太陽光パネルの開発に取り組み、それと同時にSolaric社を立ち上げました。彼が考案した太陽光パネルを使用した電力供給モデルは、オフグリッドソーラーといわれ、バングラデシュでものすごい速さで普及しており、貧困層にエネルギー源を提供するという快挙を成し遂げました。(写真:Solaricの創設者、Didar Islam氏)
Solaric社創始者のDidar Islam氏による講義の模様

もう一人の起業家はKhadem Mahud Yusuf氏、BPCLの創設者です。BPCLはペットボトルの原料であるPETポリエスチレンテフタラートのリサイクル事業を行っています。Khadem Mahud Yusuf氏は、米国の通信業でエンジニアとして働いたあと、2003年にバングラデシュに帰国しました。バングラデシュでNokiaやBRACNETに勤めたあと2011年にBPCLを立ち上げ、バングラデシュでPET生産・リサイクル事業を始めました。

バングラデシュでは、1984年にBRACとバングラデシュ政府が共同でおこなった Oral Rehydration Therapy という口や手の衛生管理や飲料水の安全性についてレクチャーをするプログラムがありました。このプログラムのおかげで、下痢や腹痛を抱える子供たちが減り、バングラデシュ人の全体が衛生管理の重要性に着目するようになったのです。現在のバングラデシュでは、飲料水は必ずペットボトルまたは沸騰したものでなければいけないということが、当たり前のようになっています。バングラデシュに安全な水を供給する入れ物として使われるPET。Khadem Mahud Yusuf氏はPETを国内で生産およびリサイクルすることで、雇用をつくり、飲料水の生産のコストを下げ、安全できれいな水がしっかりと人々の手に渡るように目指しています。

 私は二人の社会起業家の話を聞いて、社会に貢献をするというのは実にさまざまな方法があるのだなと感じました。何よりも私は彼らの志に感激しました。二人の起業家は海外で活躍していたのにも関わらず、バングラデシュの人々の暮らしを改善するために、考え、帰国して、今このような活動をしているのです。日本とバングラデシュでは環境も文化も違いますが、社会の為に何かしたいという考えは変わらないのです。