Alliance Forum Foundation

  • ライブラリ
  • お問合せ
  • Jpn
  • En

2016年4月にスタートした3年間のプロジェクト「食物へのアクセス制限がある塩害地域の子どもの栄養改善プロジェクト」が終了しました。

こんにちは。
アライアンス・フォーラム財団 プログラム・オフィサー / 栄養士の太田旭です。
この度、3年間にわたりバングラデシュ人民共和国を事業地に実施して参りました『食物へのアクセス制限がある塩害地域の子どもの栄養改善プロジェクト』が終了いたしました。

レシピ集はどう仕上がったのか?Community Houseはどうなったのか?
今回は映像として報告させていただきたいと思います。ぜひご覧くださいませ。

■3年間の成果映像

■1年目終了前の報告映像

撮影後記:
事業計画の通りには実施いたしませんでした。現地の状況や技術移転先であるパートナー団体の理解度・要望に合わせ、何度も事業修正と補正予算を繰り返しました。改良のための事業修正を理解し快く応援してくださった味の素財団のみなさん、ありがとうございました。多くの関係者の方々と関われた本プロジェクトは、現地の方々にしっかりと受け継がれました。今後はちょっと離れた日本から見守りたいと思っています。

地域栄養啓蒙員の神対応に感動!

バングラデシュよりこんにちは。途上国事業部門 栄養士の太田旭です。

突然ですが、バングラデシュのソウルフードとも言えるカレー、こちらでは本当に毎日カレーを食べているということを信じられますか? 実際の所、私も現地人スタッフも、朝は豆カレー、お昼は野菜カレー、夜は魚又は海老のカレーを当たり前のように毎日おいしくいただいております!

このプロジェクトで1年間かけ実施した調査の結果でも、私たちのプロジェクト実施地域の5歳児以下の子ども達の食卓には、“魚カレー”が最も多く出現しているという状況が明らかになりました。この地域は川や海が近いだけあって肉厚な白身魚を比較的安価に入手することができます。お肉やお魚が高価でなかなか手に届かない地域ということもあり、この“魚カレー”は地域の食を支える貴重なタンパク源となっているのです。

写真1:CNVがCHに集まった親子に食事指導をしている様子

写真1:CNVがCHに集まった親子に食事指導をしている様子

さて、そんな魚カレーの美味しいこの地域で課せられた今回の私のミッションは『食物へのアクセス制限がある塩害地域の子どもの栄養改善プロジェクト』で設置したCommunity House(=地域保健の家、以下「CH」)15か所全てを訪れ、Community Nutrition Volunteer(=地域栄養啓蒙員、以下「CNV」)の活動の様子をモニタリングし、プロジェクトの進捗状況を評価する。という内容でした。

主なモニタリングポイント4点
 ①、プロジェクトで作成した栄養教育教材は上手に活用できているか
 ②、調理器具や身体測定器材は正しく使用・管理できているか
 ③、CNV達の健康・栄養・食に関する知識レベルはどの程度まで向上したか
 ④、CHの運営状況は地域の生活スタイル・ニーズに合っているか

これらをモニタリングしつつ、CNV達と交流会という名の悩み相談会を催し、専門家としてフィードバックコメントをプロジェクトメンバー全員に共有しました。このフィードバックコメントは、プロジェクトの仮説の見直し、目標の再設定、活動内容の修正を行う際に役立てるという目的のもと共有しています。実際に、先日開催された2017年下半期会議でも早速フィードバックコメントを受けての修正案が活発に挙げられました。

実は、この時期バングラデシュの沿岸部では豪雨による洪水被害が相次ぎ、プロジェクト地でも浸水により一時稼働できないCHがありました。私の滞在中も毎日雨が降り、本来地域の人達に訪れてもらうべくCHに誰も人が来られないという状況に見舞われました日がありました。しかし、そんな日でも大人しく待っているだけのCNV達ではありません!!傘を握りしめ、妊婦さんを優先的に毎日家庭訪問をして地域の栄養啓蒙活動を続けているのです。

「お腹の大きい妊婦さんや子ども達が足場の悪い中転んで怪我でもしたら大変だからね」と、笑顔で語るCNV達の神対応に感動させられました。

写真2:CHにて体重測定中の地域の子ども

写真2:CHにて体重測定中の地域の子ども


写真3:家庭訪問へ出かける前のCNV達

写真3:家庭訪問へ出かける前のCNV達

コミュニティハウスのオープニングセレモニーが開催されました

はじめまして。こんにちは。アライアンスフォーラム財団にて、昨年9月よりインターンをしています金森と申します。今回は、2月の上旬に同行させていただいたバングラデシュ出張の様子をご報告したいと思います。

首都ダッカから飛行機で30分、マイクロバスに乗り換え3時間ほど走ったところに今回の目的地があります。私たちが訪れたバゲルハットという場所は、自然が豊かな農村地域という印象です。この時期の日本では考えられないような温暖な気候のもと、沼地や水田が広がっています。

img_170216_01

写真1:オープニングセレモニーとCNVたち

プロジェクト実施地へ到着すると、まずCommunity Nutrition Volunteer(=地域栄養啓蒙員、以下「CNV」)達が集うCommunity House(=地域保健の家、以下「CH」)のオープニングセレモニーに参加しました。
私は現在大学で管理栄養士課程に所属する学生であり、CNVと同じように栄養について学んだことを活かして人の役に立ちたいと願う学習者でもあります。バングラデシュに渡航する前から「CNVはどんな人たちだろうか」という気持ちがあり、この機会に直接会うことを楽しみにしていました。
CHでは30人ほどのCNVが出迎えてくれました。CNVに向けての自己紹介では、大学で栄養の勉強をしていることやなぜ栄養について勉強しようと思ったのかなどを話しました。私は彼女たちが話すベンガル語は分かりませんが、反応や雰囲気から応援してもらっているような空気を感じました。この出来事に心が温まり、知識も経験も浅い学生ですがこれからも引き続き精進していこうと気持ちが引き締まりました。

img_170216_02

写真2:KFSの様子

今回は秋に実施したキーフーズ調査(以下「KFS」)*1のフィードバックを行うとともに、雨季に入る前のバゲルハットで第2回目のKFSを実施しました。担当した現地スタッフの2人は、プロジェクトへのモチベーションが高く真摯に取り組んでいる印象でした。既に一度KFSを行った経験を持っているため、調査に協力してくださるお母さんへのあいさつや調査目的の説明も丁寧で、時には私へのベンガル語⇔英語の通訳を、時には冗談を飛ばして人々を笑わせるなど非常に幅広く業務をこなしていました。

———————————————
*1<キーフーズ調査とは?>
キーフーズとは、「地域で入手しやすく手の届き易い価格や条件の食材で構成され、その地域の食を支えているいわば“Key=鍵”となる料理」を指します。食物ベース食生活指針(Food-based Dietary Guidelines)によって提言された概念に則り、キーフーズを抽出することによって地域住民の食事内容を栄養素ベースで考察・不足または過剰に摂取する栄養素を食物ベースで調整するレシピの開発が可能となります。

dav

写真3:市場見学の様子

img_170216_04

写真4:市場で売られるたまねぎ

バゲルハット滞在期間中には、人々が食料品を手に入れるために集う市場にも足を運ぶ機会がありました。市場は多くの人で賑わっていて、活気のあるバングラデシュの空気がより濃縮されたような雰囲気でした。
市場では、近隣の川で獲れた魚やエビのほか米や野菜、香辛料など様々な食材が売られていました。沼地や川が多くあるバゲルハットでは魚やエビの種類が多く、市場でも多くの売り場を占めていました。これらを使ったカレーはもちろん絶品です。

今回市場をめぐる中で、新たな発見もありました。それは、同じ野菜でも日本とバングラデシュでは違いがあるということです。
特に衝撃的だったのは、たまねぎの大きさです。日本のスーパーで売られているたまねぎの大きさを想像してみてください。だいたいこぶし大くらいです。しかしここバゲルハットの市場で売られていたたまねぎは、一口サイズのように小さなものでした。この小さなたまねぎはバングラデシュ産のものだそうです。
たまねぎに関しては、もうひとつ認識の違いがありました。それは、「たまねぎはスパイス」ということです。日本では炒め物や煮物に使われるポピュラーな野菜ですが、ここバングラデシュでは、唐辛子やにんにくと同じように香辛料という使い方をするそうです。確かに食堂では、辛さの調整用として置かれた唐辛子とともにバングラ特有の小さなたまねぎもしっかりと存在感を放っていました。

このように、現地へ足を運んだからこそ分かることが多くありました。日本で学んだ知識や技術を生かして取り組む方法も一つですが、先入観を捨て現場での新たな知見を得ることの大切さを学び、かけがえのない経験となりました。

img_170216_05

写真5:休憩中の一コマ

リキシャや人々が行き交い、夜遅くまでクラクションが鳴りやまないバングラデシュ。その騒々しさがすでに懐かしく感じます。またいつか訪れることができたら嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。ドンノバート!!

キックオフから半年経過「食物へのアクセス制限がある塩害地域の子どもの栄養改善プロジェクト」の6か月間を報告いたします

こんにちは。
こちらの日記には初登場となります、アライアンス・フォーラム財団 栄養士の太田旭です。

以前ホームページ でもお知らせした通り、食物へのアクセス制限がある塩害地域の子どもの栄養改善プロジェクトが【味の素「食と健康」国際協力支援プログラム2016年支援事業】として選出され、今年の春からバングラデシュ人民共和国を事業地にプロジェクトが始動いたしました。プロジェクト始動から半年経過という節目に合わせ、この6か月間をざっくりと振り返りたいと思います。

【春】
4月からCommunity Nutrition Volunteer(=地域栄養ボランティア)の選出とCommunity House(=保健の家)の設置場所選定活動が始まりました。現地パートナーNGOの提案は事業の計画段階からいつも挑戦的で、実際にプロジェクトが始まったら若干の遅れが出てきちゃうのでは?なんて少-しだけ不安がありました。実際の所は全くの遅れもなく、妥協もなく完了!!という感じで、我らがパートナーであるジャゴラニ・チャクラ財団(Jagorani Chakra Foundation: JCF)スタッフ達が相変わらず頼もしすぎます。

img_161108_01

写真1:バングラデシュ側のプロジェクトマネージャーであるモーハン氏と野菜カレー

【夏】
選ばれしCommunity Nutrition Volunteer総勢30名への研修プログラムが開始されました。彼女たちを対象に行った第1回理解度テストの結果では、食物ベースでの栄養効果や衛生面での適切な知識が不足しているという状況が表れました。しかし、本プロジェクトの研修プログラムを重ねていくごとに、少しずつ知識が深まってきているようです。

img_161108_02

写真2:地域の栄養啓蒙活動場所視察中の様子

【秋】
現地パートナーNGOのプロジェクト幹部スタッフ3名を対象に、地域の食の営みを把握するべくキーフーズ調査実施方法が伝授されました。実際に家庭訪問をして行う実践訓練期間も終了し、来る11月15日からプロジェクト実施地にある3歳~5歳までの健康なお子さんを持つご家庭50軒を訪問、キーフーズ調査が実施される予定です。

img_161108_03
写真3左:キーフーズ調査技術移転研修実施中の様子、調査用紙の記入方法を確認中
写真4右:キーフーズ調査実践訓練中の様子、昨日何を食べたのかインタビュー中

まだまだ始まったばかりのプロジェクト、これからが楽しみですね。
突然ながら、今回の日記の最後に、バングラデシュで思わず笑ってしまったエピソードを短歌にかえて紹介したいと思います。

出張期間中ダルカレー(豆野菜カレー)を毎日食べる程大好きになった私ですが、たまには違うものをとサンドウィッチを注文した時のエピソードです。五・七・五・七・七のリズムでどうぞ!共感できる人もいるのでは?笑

【題目:いつもの味】
― ハムサンド カレー粉入った マヨネーズ どんな料理でも カレー味だな ―

以上、バングラデシュのカレー味ポテトサラダも好きになった太田旭でした。

マイクロファイナンス・グループへの聞き取り

ノモシュカール!

アライアンス・フォーラム財団バングラデシュ(以下、バングラ)事務所の本村です。

今回の冒頭は、いつものアッサラーム・アライクム(イスラム教徒の方々への挨拶)ではなく、イスラム教徒以外の方々への挨拶であるノモシュカールでした。というのも、その違いを念頭に置いて、挨拶の言葉を選ぶ機会があったからなのです。

当財団のホームページでもお知らせしているとおり、当財団のバングラでのプロジェクト「食物へのアクセス制限がある塩害地域の子どもの栄養改善プロジェクト」が、【味の素「食と健康」国際協力支援プログラム2016年支援事業】の助成先として選出されました。本プロジェクトは、バングラのナショナルNGO(注1)であるジャゴラニ・チャクラ財団(Jagorani Chakra Foundation: JCF)との協働により実施します。プロジェクト名のなかにある塩害地域とは、ベンガル湾沿岸部に位置するクルナ管区バゲルハット県を指します。同県は、河岸侵食による土地流出や塩害によって農業活動が制限され、生活や食習慣への被害を受けやすい県のひとつです。同県にて、5歳未満の子どもたち約3,000名を直接受益者として、プロジェクト活動を実施します。

注1: バングラデシュの現地NGOは、2つに分類されます。ローカルNGOとナショナルNGOです。イメージとしては、規模が小さいNGOがローカルNGO、規模の大きなNGOがナショナルNGOと思っていただければよいかと思います。

バングラデシュの地図
(出典)Maps of World

実は、本プロジェクトは、私が当事務所の事務所長となってから初めて、とあるレストランでの同財団とのミーティングから始め、プロジェクト形成段階での現地事前調査、当財団東京オフィスの元インターンの上田さんと竹田さんによる文献・デスクトップ調査、元インターンの生駒君によるバングラでの現地追加調査を経て、東京オフィスの栄養士プログラム・オフィサー太田(旭)がラブレターを書くかのようにプロポーザルに没頭し、マネジャーの太田(裕)が激をいれながら一丸となって取り組んだ結果、味の素社からの採択を得た案件です。

 助成先として選出された後の4月11日、私は同プロジェクトの対象地域、バゲルハット県バゲルハット・サダール郡に出張し、直接受益者である5歳未満の子どもたちの母親が属するマイクロファイナンス(MF)グループに、朝食、昼食、夕食の調理・常食状況や、果物の常食状況、牛乳や乳製品などに関して聞き取りを行いました。

この聞き取りで訪れたMFグループのふたつが、キリスト教(カトリック)とヒンドゥー教の村のMFグループだったため、母親たちとの最初の挨拶が、冒頭の「ノモシュカール」だったのです。そして、キリスト教の村のMFグループが集まってくれた場所は、教会の横でした。聞けば、普段の別の集会のときも、彼女たちは教会横に集まるとのことでした。イスラム教を信仰する村のMFグループとは、食物の常食状況も含めて、様々な違いを意識しながら、今後プロジェクト活動を行っていく必要があります。

※聞き取り調査後の、MFグループとの交流

マイクロファイナンスグループとの交流の様子

 ところで、この聞き取り調査では、塩害被害を受けている地域特有の声が女性たちから上がりました。まずは村で食される果物に関してです。なんと、塩害の影響により村内で果物が育たない村があるのです。バングラデシュの農村であれば、バナナは1年中見かける果物で、ココナッツも自然に生えているイメージがありましたが。このため、住民たちは果物を市場で購入する必要があり、当然ながら、その現金支出は家計を圧迫します。他には、沿岸部の村の特徴として、小さい海カニや小エビが材料として使われるという村もありました。また、卵が高価のため月に2回しか食べないというグループもあれば、村内で鶏やアヒルを飼育しているため、日常的に目玉焼きや卵カレーを食べるというグループもありました。上記のように、食習慣が様々なMFグループの家族に属する5歳未満の子どもの栄養改善のために、当財団とJCFは本プロジェクトに取り組んでいきます。

12345...